弁護士会費は弁護士の必要経費
弁護士事務所を経営する上で、何より必要なのが弁護士、つまり弁護士資格になります。
司法試験に受かれば、一生弁護士でいられるかというとそうではありません。
弁護士事務所のある都道府県の弁護士会に、毎年会費を納めなければ弁護士としての活動をすることができません。
この会費と言うのが曲者で、東京弁護士会で年間約57万円ですが、地方によっては年40万円のところもあれば、120万円近いところもあり、全国一律ではありません。
東京などの大都市であれば弁護士数も多いため、会の経費が大きくとも一人あたりの負担は少なくなりますが、弁護士の少ない地方都市になると一人あたりの負担が増えるという構図になっています。
東京よりも年商が少ない弁護士事務所が多い地方弁護士会では、かなりの負担になっていることが伺えます。
病気で弁護士事務所を一時休業したり、女性弁護士が妊娠・出産・育児で休暇を取っている間などは会費の免除があり、場合によっては新人弁護士には軽減がありますが、滞納してしまうと弁護士資格のはく奪となってしまうことがあります。
つまり、弁護士が弁護士であるための本当の必要経費は、弁護士会に支払う会費と言う事になります。
弁護士からも「会費が高い」と言う声が出ているのも事実ですが、一般的な会社や自治体の会費とは性質が大きく違う事から高額となっている面があります。
弁護士は中立性から公的機関からの干渉を受けない自治性が極めて高く、弁護士に対する加入や退会だけでなく、弁護士に対する懲戒処分の諮問、民間に対する無料法律相談、犯罪更生者や社会的弱者に対する法律支援の基金のねん出など多岐に亘るのが、原因となっています。
弁護士会費が高いと考えるか妥当と考えるかは人それぞれでしょうが、弁護士を続けるのならば会費の支払いは一番の優先事項となるでしょう。
法律事務所システムソフトで弁護士の案件管理を効率化|株式会社システムキューブ
弁護士の年収が1/3になる時代が来る?
弁護士数の増加により、経営の苦しい弁護士事務所が増えています。
日弁連の統計をみると、2015年3月の時点で、弁護士の数は36,415人、弁護士事務所は15,331所ですが、10年前の2005年の弁護士数は21,185人、弁護士事務所は11,521所です。
つまり、10年ほどで弁護士は約1.71倍、弁護士事務所数は約1.33倍増えていると言う事になります。
もし、弁護士業系全体の年商規模が変わらないのであれば、2005年と比べて2015年の弁護士一人あたりの年商は58.8%、つまり6割くらいの年商しかないことになります。
弁護士事務所にかかる経費自体はあまり変わりがないため、年商が下がれば経費の割合が大きく上がるため、経営を圧迫することになります。
仮に2005年が年商2000万円で、経費に1000万円かかり、年収が1000万円あった弁護士事務所でも、2015年には年商1200万円ならば経費を引くと200万円しか年収がないことになってしまいます。
さらに追い打ちをかけているのが訴訟数の減少です。
2003年には民事・刑事裁判などを合わせて60万件あったのが、2015年には35万件と約58.3%にまで落ち込んでいます。
弁護士事務所の仕事は訴訟のみではありませんが、訴訟を中心とした経営方針をしている弁護士事務所であれば、仕事が6割まで減少していることになります。
つまり、弁護士の増加により6割に減、訴訟数の減少により6割に減、と両方の現象が合わさってしまうと、単純計算で10年前の年商の3.6割くらいしか弁護士は稼げなくなってしまっていることになります。
経費を差し引いた年収で考えると、1/3になってしまうことも無きにしも非ずの話になってきます。
もちろん、単純な計算だけで弁護士事務所が成り立つわけではありませんが、競争激化による弁護士報酬の低下が加わると、弁護士事務所経営も戦国時代さながらの様相なのかもしれません。
法律事務所システムソフトで弁護士の案件管理を効率化|株式会社システムキューブ
弁護士事務所兼自宅のメリット・デメリット
都市圏以外では、「弁護士事務所兼自宅」と言う形で弁護士事務所を経営されているところも多くあります。
また、若手の弁護士に多い事務員がおらず弁護士一人だけの弁護士事務所などは、1DKや2DKのマンションを借りて、1室を弁護士事務所として使っていたりします。
弁護士事務所兼自宅であると、事務所を別に借りる家賃がいらないという大きな利点があります。
また、住宅ローンや家賃を事務所として使用している広さの割合に応じて、経費として処理することができ、水道光熱費等も同じように経費として計上することができるため、運転資金が乏しい場合には経費節減の方法としては良いと言えます。
事務所と自宅が同じなので通勤時間の無駄がないことと、夜間や休日などに問い合わせがあった場合にでもすぐに対応ができる利点があります。
ですが、事務所と自宅が同じと言う事は、仕事とプライベートの境目があいまいになりがちです。
「夜中まで仕事をしていてベッドに行くのがしんどくて、そのまま事務所のソファで寝てしまった。」
「朝起きてすぐに仕事の資料が目に入り、気分が落ち込む。」
「土日は休みとしているのだが、事務所の電話が鳴ってしまうと気になってついとってしまう。」
と、仕事とプライベートの切り替えが上手にできる人でないと、経済的な恩恵以上のストレスを負ってしまう可能性があります。
一度弁護士事務所兼自宅としてしまうと、事務所を分離して別にかまえるというのは、事務員が増えたり、賃貸物件で更新の時期に更新料などから引っ越すからと言った理由がないと、なかなかできなくなります。
そのため、中には同じマンションの中に、自宅と弁護士事務所の2室を借りて、通勤時間などのロスを減らしつつ、仕事とプライベートを分けている弁護士もいます。
法律事務所システムソフトで弁護士の案件管理を効率化|株式会社システムキューブ
弁護士事務所の不動産物件探し
弁護士事務所を新規に開所したり、移転したりする際に、事務所探しは重要なポイントになります。
地域性や取り扱っている案件の種類によって希望の立地が変わるとは思いますが、多くの弁護士事務所は地方裁判所の近くか、県庁所在地の乗降客の多い駅前や、ビジネス街といった繁華街を希望されます。
訴訟関係を多く取り扱っている弁護士事務所は裁判所に近ければ便利ですし、借金問題や離婚問題などを取り扱っており広く集客したい弁護士事務所は、人が集まる場所に開所するのは理にかなっています。
「裁判所に近い便利な所や人が集まるような繁華街は、家賃も高いし、何より賃貸不動産物件がないんじゃないか?」と、思われる方もいるかもしれません。
しかし、弁護士事務所として不動産物件を探す際は、意外と見つかりやすかったりします。
理由はいくつかあるのですが、まず一つに広さがあまり必要がない点です。
弁護士と事務員が一人ずつの弁護士事務所の規模ならば、8畳ほどの広さがあれば机二つに応接セットを置くことができるので、広さが問題で不動産物件が見つからないと言う事は稀です。
もう一つが、階数を気にする必要がない点です。
飲食店や物販であれば1階が有利であるため、どうしても不動産物件が少ない上に家賃も高めになります。
ですが、弁護士事務所は飛び込み客よりも、事前に電話などで相談の上来る予約客が大半であるため、上層階であっても問題がないので、家賃が安く広めの物件を見つけることも出来ます。
一番の利点は、弁護士という看板です。
貸す側からすれば弁護士はいい客筋ですので、「弁護士だからイヤ」と断るオーナーはほとんどおらず、逆に「ぜひ入居して欲しい」というオーナーもいるほどです。
そのため、敷金や家賃の交渉が出来る場合もあり、他の業種に比べて弁護士はかなり有利と言えるでしょう。
新設や移転には費用が掛かるため、頻繁にできるものではありませんが、家賃は継続的な経費となるため、見直してみるのも良いかもしれません。