成年後見制度は弁護士事務所の柱となるのか?
法律事務所向けシステムThemis開発の田原です。
社会の高齢化と核家族化で10年以上前から問題となっているのが、独居老人問題です。
一人暮らし、もしくは夫婦二人だけの高齢者世帯が増え、認知症などで判断能力が衰えていることに付け込み、高額商品を売りつけたりリフォーム契約を結ばせたりする悪徳商法が横行しました。
そのため、以前禁治産や準禁治産制度と言われていた制度を、2000年に介護保険と同時に一部の改訂をくわえて成年後見制度が施行されました。
成年後見制度を介護保険と同時施行した背景には、介護保険の施行で「介護が必要な高齢者であっても、介護保険によってある程度自立した生活ができるサービスを提供する」というようになったのですが、介護を受ける高齢者の財産問題があったからです。
介護が必要な認知症の高齢者であっても、本人と介護サービス会社間で介護保険の利用契約を結ばなければいけません。
ですが認知症を患っている場合には、法的には契約が無効となる可能性があるため、代わりに契約ができる制度を早急に整備する必要があったからです。
他にも子供が同居していたのならば問題が少なかったのですが、一人暮らしをしているなどすると親が認知症を発症していることを子供が知らず、介護ヘルパーから「認知症の疑いがある」と連絡があったり、ひどい場合には詐欺にあってから知ることがあり、高齢者保護の面から弾力的な財産管理が必要となったからです。
弁護士事務所に寄せられる依頼の中にも、子供が親の成年後見人となる手続きがしたいと言うものが増えています。
中には、子供が成年後見人となるのを嫌がり弁護士事務所が成年後見人となったり、依頼人自身が認知症となった場合、指名するものを成年後見人とする手続きを弁護士事務所に取ってもらうように事前に依頼すると言う事もあります。
弁護士事務所が成年後見人となると、後見人費用と言う事で毎月2万円~5万円ほど非成年後見人から支払ってもらえるため、10軒もすれば毎月20~50万円の定期収入となるためありがたいと言う弁護士事務所もあります。
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イソ弁・ノキ弁の事情
Themis開発をしております、株式会社システムキューブの田原です。
弁護士の勤務形態を表す言葉に、イソ弁・ノキ弁があります。
弁護士事務所に給料をもらいながら在籍するのが居候弁護士(イソ弁)、弁護士事務所の名前を借りて活動をするが給料がもらえず、自分の弁護士活動で利益を得るのが軒先を借りている弁護士(ノキ弁)と言います。
新米弁護士や経済的に余裕のない弁護士からすると、イソ弁・ノキ弁はありがたい勤務形態と言えます。
弁護士はもともと閉鎖的な業種であったため、「先輩のいる弁護士事務所にお世話になろう」や「同じ大学卒業の先輩弁護士を頼ろう」と、大学の関係や友人関係のツテで就職することが多かったです。
また弁護士事務所を経営している弁護士も、「後輩の弁護士が一人前になるまでは、面倒見てやろうか」と言った気風があったのですが、近年では不況などの理由から減ってきています。
ある弁護士事務所が人手不足からイソ弁の募集をしたところ、一人の枠に対して30人近い応募があり、いかに個人で弁護士の仕事をするのが難しいことであるかがうかがえます。
減りつつあるイソ弁と比べ、増えているのがノキ弁です。
ノキ弁側からすると、電話代・事務負担費などがある場合もありますが自分で弁護士事務所を経営維持するよりも安く済み、老舗の弁護士事務所であれば看板力があるため、信頼度もあり広告をしなくても集客できる長所があります。
さらには、仕事がいっぱいの先輩弁護士から仕事を回してもらえる可能性もあるので、在籍出来るだけでも御の字と言うノキ弁もいます。
一方、ノキ弁を雇っている弁護士事務所は、弁護士を雇っていても費用が掛からないだけでなく、反対にフランチャイズ契約のように一定の事務負担費がもらえるため、経営が楽になります。
たま、依頼が重なり新規の依頼を受けられない状態でもノキ弁に依頼を回すことで、ノキ弁からは感謝をされ、依頼者に「多忙で断られた。」との悪印象を与えずに済むので、お互いに利点があるそうです。
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弁護士事務所の紹介料問題
法律事務所向けシステムThemis開発担当の田原です、お世話になっております。
弁護士事務所の依頼のきっかけは、「知人からの紹介」「以前の依頼者の口コミ」など、紹介であることが多くあります。
2000年に弁護士事務所の広告禁止の規制がなくなるまでは、弁護士の依頼は紹介によるものがほとんどでした。
そのため、弁護士も地域や企業に顔を売らなければいけないため、地域の中小企業の会合に参加をしたり、ライオンズクラブに加入したりと、人脈を広げることが死活問題でした。
もちろん知人から紹介をしてもらえるのは、全く知らない人の依頼を受けるよりもリスクが軽減するなどのメリットがあるのですが、一つ問題となるのが紹介料の問題です。
弁護士法により、法律的な問題解決を対価を得て弁護士以外がすることは禁止されています。
なので、「法律の事なら、○○弁護士事務所に相談したらいいよ。」となるのは自然な流れで、弁護士としても顧客を紹介してもらったことに報酬を支払いたいと言うのは否定できない感情です。
弁護士事務所の紹介料に対する判例によると、「弁護士への紹介を業として行っているものへの紹介料としての報酬を支払うことは違法」となっています。
この「業」と言うのが肝で、「弁護士への紹介を仕事としている人にお金を支払うのはダメ。」ということで、俗にいう「紹介屋」と言われる職業であると認められると違法であるが、個人に1回だけと言う場合には裁判所も寛容な判決が出ています。
しかし、日弁連では「紹介料の支払いは一切禁止」との自主規制を定めており、日弁連に登録しなければ弁護士活動ができないため、実質的には全面禁止となっています。
そのため、最大手の「弁護士ドットコム」でも、弁護士紹介はしていても月極めの広告料しか徴収をしていませんし、楽天が「士業紹介サイト」の設立をしようとした際も、紹介料問題により弁護士の紹介を断念したいきさつがあります。
やはり、弁護士事務所は金銭的なつながりよりも、人脈による紹介がモノを言うのは今も昔も変わらないようです。