弁護士事務所の共同経営は増える?減る?
弁護士事務所の数は、2010年で12,541軒だったのですが、2015年では15,331軒にものぼります。
5年間で2,790件も増えたことになり、弁護士が高齢や死亡などで廃業した分を考えると、3,000軒以上の弁護士事務所が新規に増えたことになります。
2015年度だけでも司法試験合格者が1850人で、そのうち1500人ほどが弁護士となっていて、毎年弁護士の数が増えているのですから、弁護士事務所が増えるのは当然なのですが、弁護士数別の弁護士事務所数をみると、興味深いことが分かります。
2010年度から2015年度までの弁護士事務所数を比較すると、弁護士が11人以上の規模の弁護士事務所の数は微増もしくはほぼ横ばいなのですが、10人以下の弁護士事務所は増加しています。
さらに弁護士数で「1人・2人・3~5人・6~10人」で細かく分類すると、「115%・136%・135%・127%」の伸び率となるため、「一人の個人事務所よりも、数人のこじんまりした共同経営の事務所が増えている」と言う事が分かります。
ある地方都市の若い弁護士達が共同経営している弁護士事務所では、10人近く集まって机貸しの状態なので、一人あたりの実質的な負担は10万以下で済んでいるのに、市街地の一等地に事務所を構えて、事務員も一人雇うことができているので、利点が多いそうです。
また、弁護士同士のつながりもゆるいため、資金を貯めてそこから独立する人もいれば、紹介で入ってくる新人弁護士もおり、事務所の活気と言う点ではすごく良いそうです。
共同経営であれば事務所経費が頭割りできるため、人数が多ければ多いほど負担が軽くなる利点があるため、ますます増加するのではないかと思われます。
特に若い弁護士は資金も乏しく、上司や先輩といった人間関係を嫌う傾向が強いので、こういった形の共同経営の形もありなのかもしれません。
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離婚問題専門の弁護士事務所は斜陽なのか?
離婚問題専門を謳う弁護士事務所は少なくなく、中には「女性弁護士による、女性からの離婚問題のみ」に特化した弁護士事務所まであります。
離婚率の上昇や、一般人でも離婚時の不倫に対する慰謝料や養育費・財産分与に対する知識を得る機会が多くなったため、「離婚をする際には、弁護士に相談する」と言うのがスタンダードとなっています。
そのため、「離婚問題を取り扱っている弁護士事務所は、安定して経営しているのかな?」と、思う方もいるかもしれませんが、実情は少し違うようです。
司法試験の改正により弁護士が増えたため、単純に弁護士数で頭割りをすれば、一人あたりの依頼数が減ることになりますので、弁護士事務所同士が依頼の取り合いとなります。
そして何より、離婚件数が減っていることが大きな原因になっています。
「え?バツ1やバツ2とか、離婚が珍しくなくなっているのに、減っているわけない。」と思われるかもしれません。
確かに離婚率は上がっているのですが、離婚件数自体は減っています。
晩婚化で結婚件数が減っていることが原因の一つで、さらには景気の悪さから離婚後に経済的な不安がある妻が離婚をあきらめるケースが多く、近年の離婚件数は減少傾向にあります。
しかも、離婚調停や訴訟の知識を一般人も広く持つことになったので、弁護士報酬を十分に支払える優良な依頼人から、貯金どころか夫婦そろって借金だらけで弁護士が介入したとしても到底報酬が支払ってもらえない依頼人まで、今まで以上に依頼人の質が幅広くなることが考えられます。
離婚問題を専門に長年経営してきた弁護士事務所も例外ではなく、新たに離婚問題専門の弁護士事務所を設立するところはさらに厳しい状況になるのではないかと予想されます。
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大学法学部の人気に陰り
弁護士と言うとバブル期以前ならば、医者やパイロットと並んで「頭がいい上に、収入も高くて、何よりかっこいい!」と人気の職業でした。
ですが、3年前に東京大学法学部が進振り制度で定員割れを起こした時には、元法務大臣がコメントするなど大きな反響があったのですが、去年も東京大学法学部で定員割れが起こり、「大学生の法曹界離れ」が露呈する形になりました。
これは東京大学に限ったことではなく、早稲田大学や上智大学でも定員割れが常態化し、新潟大学など地方大学法学部においては、入学試験の時点で定員割れを起こし新たに追加募集を行うなど、法学部は以前の人気学科から不人気学科へと凋落していることがうかがえます。
もちろん、法学部に入学した学生全員が弁護士になるわけでなく、法務省や外務省などの国家公務員や検事・裁判官を希望している学生もいるでしょうが、昨今の「弁護士事務所の経営は楽ではない」と言う話を聞くと、「苦労して弁護士になっても生活が苦しいなら、他の業種を選んだ方がいい」と考えるのは当然の成り行きだと言えます。
実際に弁護士になった人たちの中には、自分で弁護士事務所を経営するよりは、先輩や既存の弁護士事務所に「就職」する方も多くいます。
40歳以上の中堅どころの弁護士事務所を経営している弁護士であっても、他の弁護士との共同経営にしたり、場合によっては自分の弁護士事務所を廃業して、別の弁護士事務所に就職すると言ったことも起きています。
これからの弁護士事務所の経営は、他の業種以上にインターネットによる広告などによる集客や経費の削減など、多くの課題をクリアできる経営手腕が、弁護士にも求められるようになってくるのではないかと思われます。
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弁護士の横領が急増の背景には
近年、弁護士による着服・横領事件が後を絶ちません。
2000年に成年後見制度が制定され、2010年に貸金業法改定が本格施行されたため、弁護士事務所には、成年後見制度の手続きや過払い金請求の依頼が殺到しました。
特に過払い金請求に関しては、「特需」や「バブル」と言われるほどの利益を弁護士事務所にもたらし、個人の弁護士事務所でも1年で数千万円の利益を得たところも珍しくありませんでした。
ですが、そのころから弁護士の着服・横領事件の件数が増加しています。
以前から弁護士は、数百~数千万円の金額や不動産が絡む案件を処理することはありましたが、実際に弁護士がその現金を預かり、自由にできると言うケースは少なく、「書類上だけ」と言う事がほとんどでした。
しかし、成年後見制度で後見人が弁護士であれば、ある意味自由に使えますし、過払い請求も消費者金融から返金された過払い金はいったん弁護士事務所が預かり、弁護士報酬を差し引いて依頼人に支払うことが多いので、依頼人への報告をごまかして返金を減らすといった手口で横領していたと言うケースもあります。
弁護士の数が増えたうえに、過払い請求の特需も2~3年前に終焉を迎えつつあるので、「弁護士事務所経営が厳しい」という弁護士が急増しているのも相まって、「目の前にある依頼人のお金」を簡単に横領してしまう事件が後を絶たないのです。
しかも、20~30代と言った若手弁護士ではなく、50歳以上の弁護士の横領事件の方が圧倒的に多く、「弁護士と言うだけで高収入」であった派手な生活から抜け出せずにいる背景が透けて見えます。
依頼人もニュースなどで弁護士の着服・横領問題を知っていることが多いので、過度に豪華な応接室や逆にボロボロの弁護士事務所では、依頼人に不安を与えかねないため、適度に美しく清潔な事務所にするように心がけた方が良いかも知れません。
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弁護士事務所から事務員が消える?
法律事務所向けシステムThemis開発担当の田原です、いつもお世話になっております。
テレビドラマを見ると、下町のあまり儲けの出ていない貧乏弁護士の主人公が、ベテラン事務員の女性に尻に敷かれつつ仕事をしたり、ヒロイン役の女性が押しかけて事務員をしたりするシーンをみますが、実際には弁護士事務所ではこういった事務員は減少傾向にあります。
20年以上前は携帯電話があまり普及していなかったため、「電話番」としてパートで事務員を雇うこともありましたが、今では弁護士の携帯電話に転送したり、弁護士の携帯番号ホームページに記載している弁護士事務所もあるため、電話番だけを目的として事務員を雇うことは少なくなりました。
また、結婚をしている弁護士ならば、自分の妻や成人した娘を弁護士事務所の事務員としているところもあり、わざわざ雇う必要がないと言う事もあります。
ですが、依頼しようか考えて電話してきた時に、「事務員もいないような小さな弁護士事務所みたいだから不安だ」と思われないように、電話代行サービスを利用している弁護士事務所もあります。
弁護士の仕事は裁判所やクライアントとの面談など外出することが多いので、「弁護士の○○は外出していますので、折り返しお電話いたします」と言っても不自然ではないため、同業の弁護士が電話をしてきた際にも気づかれなかったという笑い話もあるくらいです。
二人以上の弁護士がいて事務員がいない弁護士事務所で、弁護士支援ソフトを導入しているところもあります。
事務員がいないためお互いのスケジュールや引き受けた案件の内容が分かりづらくなるのですが、弁護士支援ソフトを二人で共有して入力することにより、片方の弁護士がいなくてもスケジュールなどがわかるため、事務員代わりとして活用している事例もあります。