月別一覧:2016年12月

2人目の事務員の雇用を考える前に

弁護士が2人以上在籍する弁護士事務所ならば、事務員が一人は居ることが多いです。

電話や来客の対応、書類の作成、スケジュール管理、経理関係など、仕事の範囲が多岐にわたります。

そのため繁盛している弁護士事務所では、事務員から「もう一人事務員を増やして欲しい。」との要望が出たり、弁護士ごとに直属の事務員をつけた方が仕事の効率が良いと言う事があります。

しかし、事務員を一人増やすとなるとそれなりの人件費がかかりますし、事務所のスペース的に新しい机を増やすことができないと言った場合もあるでしょう。

事務員の仕事量が毎日2時間以上の残業が必要なほどのオーバーキャパである場合には、事務員を増やした方が良いでしょうが、仕事のやり方によっては解消できる時もあります。

1つは外部に仕事を委託することです。

決算や納税の時期に会計士・税理士に相談している弁護士事務所もありますが、毎月の経理もそういった会計士や税理士に委託することにより、事務員の経理の仕事は最小限に抑えることができます。

依頼者からの入金や依頼者への返金などは、弁護士業務支援ソフトなどで管理をし、領収書などは1か月分をまとめて会計士に渡すだけとなるため、経理関係の知識がない事務員でも十分こなすことができます。

また、裁判に対する書類作成などは、弁護士業務支援ソフトがあれば簡単かつ短い時間で作成することができます。

中には、「裁判は年に2・3件くらいしかないので、その時だけ「裁判用書類一式作成 日給○万」といった1日だけのバイト募集をする」と言う弁護士もいます。

2つ目は事務機器を充実させることです。

先述していますが、弁護士事務所の業務に特化したソフトを導入することにより、仕事の効率が上がり、ひいては時短につながることがほとんどです。

他にもファックスをインターネットファックスにすることにより、いちいち席を立ってファックスを取りに行ったり、送ったりする必要がなくなります。

さらに、サーバーで事務所内のすべてのPCのファイルを共有すれば、事務員が休んだとしても、弁護士のPCから必要なファイルを開くことができます。

一時的には多額の出費に見えるかもしれませんが、事務員一人を一年間雇用する経費と比べれば安価であることが多いので、雇用する前にこれらの方法も検討してみた方が良いかもしれません。

弁護士事務所の節税

弁護士事務所を経営していくうえで、悩ましいのが税金です。

弁護士事務所を立ち上げてすぐは、経営を軌道に乗せることに注力することが多く、税金のことまで頭が回らないと言ったのが本音と言ったところでしょう。

しかし、弁護士事務所も1年目・2年目となり、「経営も順調だから税金が多いかも?」と思いつつ確定申告をしたら、「え?所得税が150万?消費税が100万?!」と、想像以上の課税をされることがあります。

弁護士事務所はどうしても他の業種よりも単価が高いこともあり、個人の弁護士事務所でも年商が1000万円を超えることは珍しくありません。

仮に給与所得が1000万円であれば、所得税と住民税で約150万円ほどになり、国民健康保険や年金などが約100万円になります。

そういったことから、節税のためにいろいろとがんばっている弁護士事務所が、数多くあります。

物品や書籍を購入する際に経費として落とすのはもちろんの事、事務員を雇って給与の支払いをするのは節税対策としてよく使われる手段です。

個人の弁護士事務所で、「弁護士の妻が秘書で、娘が事務員」と言うのは、名義上だけでも従業員としておけば節税対策になるからです。

ですが、最近の弁護士は司法試験の合格数の増加から、20代・30代の弁護士が増えています。

20代・30代の弁護士は独身の方が多く、両親も現役で会社勤めをしていたりして、「家族を従業員にする」と言うのは難しい面があります。

そのため、パート従業員を雇ったり、より経費の調整がしやすい派遣社員を弁護士事務所の事務員として雇う弁護士もいます。

しかし、本来「従業員」と言うのは会社の人材となるべき人ですので、節税や経費的な事ばかりからでなく、「本当に弁護士事務所に必要なのか?」と言う事からも考える必要があります。

弁護士事務所と消費税

弁護士事務所は、年間の売り上げが1000万円を超えるところも珍しくありません。

そういった弁護士事務所では、所得税や法人税が百万単位になる事もあり、納税の時期になると頭を痛める弁護士も多数います。

税金は前年度の収入を基準に課税されるため、弁護士事務所を立ち上げた初年度は税金がかからなかったりするケースがあり、2年目・3年目に多額の課税に驚くと言う事があります。

しかし、それ以上に問題があるのが消費税です。

現行の消費税は8%なので、1500万円の売り上げがあるのであれば、消費税だけで105万円にもなります。

物販などの仕入れのある業種であれば、仕入れ時の消費税を既払い分と出来るのですが、弁護士事務所の場合は「弁護士の技術料」と仕入れのないものによる収入となるので、売り上げのほぼ100%に消費税が課税されることになります。

経営的に赤字であっても消費税の支払いを免れないので、消費税の支払いの段階になって大慌てで金策に走る弁護士事務所あります。

消費税は基本的に前々年度の売り上げが1000万円を超えている場合に課税されるため、1000万円以下ならば課税されない「小規模事業者に係る納税義務の免除」の制度を利用して、年間の売り上げを1000万円未満に抑える弁護士事務所も多くあります

また、消費税は一括納付が基本ですが、税務署と相談の上分納とすることも出来ます。

ですが、売り上げが多額となると年2~11回の消費税の納付が義務付けられますので、弁護士が4・5人在籍しているような弁護士事務所では、ほぼ毎月消費税の支払いが発生することになります。

他にも、出資金が1000万円を超える場合には初年度から消費税が課税されたり、前年度の上半期(半年)で課税対象となる売り上げや給与が1000万円を超える場合には、翌年より消費税を課税されることになります。

弁護士事務所の経営が順調なのは良いことですが、伏兵ともいえる消費税の納税には注意をした方が良いでしょう。