看板のない弁護士事務所
弁護士事務所の看板と言えば、入居しているビルから飛び出すように設置されている吊り看板や、窓に大きく「○○弁護士事務所」と書かれているのを思い浮かべると思います。
しかし、最近あえて看板を掲げない弁護士事務所もあります。
「看板を設置するのに費用がかかる」、「看板を出そうと思うと入居しているビルの大家に許可をとらないといけない」と言った理由のものが多いのですが、看板を出すメリットがないと考える弁護士事務所もあります。
以前の弁護士事務所の集客形態は、顧客からの紹介の他には、「飛び込みや、タウンページを見てくる初めての客」が多かったです。
そのため、弁護士事務所の看板は、日ごろ弁護士事務所の前を通りかかる人への広告であり、新規に来る人への目印の役割でもあったため、無くてはならないものでした。
しかし、インターネットの普及により、初めて弁護士事務所に相談する人の多くが、インターネットで検索してから弁護士事務所を決めるため、実事務所の方の看板の重要性が薄れてきたからです。
つまり、弁護士事務所の前を毎日通って看板を見ている人でも、それが集客の決め手とならなくなり、初めて来る人であっても弁護士事務所の住所をスマホで検索すれば簡単に到着できるため、看板の必要性があまりなくなってきています。
また、未だに「弁護士事務所に入るところを、知り合いの人に見られたらどうしよう」と、抵抗感を抱く人も多くいます。
特に、離婚問題や借金問題など、人に対して秘密にしたいような相談内容を専門に取り扱っている弁護士事務所であれば、顧客は弁護士事務所に相談していること自体を秘密にしたいため、大看板が上がっているようなところには入りにくいという心理的な負担があります。
看板のない弁護士事務所のメリットは、まず依頼者のプライバシー保護が挙げられます。他人に知られずに相談できるため、デリケートな案件でも安心です。
また、口コミや紹介で依頼が多く、信頼関係が重視されるため、個別対応や親身なサービスが期待できます。
さらに、看板や広告にコストをかけないため、費用負担が軽減される可能性があります。
事務所が静かで落ち着いた環境であることも、依頼者がリラックスして相談できる点で魅力です。
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パラリーガルは将来的に無くなる仕事なのか?
数年前にオックスフォード大学が発表した「10年後に90%以上の確率でなくなっている職業」の中に、弁護士助手(パラリーガル)が含まれていました。
2~3人の小規模な弁護士事務所では、パラリーガルがいない、もしくは事務員がパラリーガルの仕事を兼ねているというところが多いですが、弁護士が2人以上の弁護士事務所となるとパラリーガルを専任で置いた方が、弁護士事務所の運営がスムーズに進むことが多いです。
パラリーガルの主な仕事は、「受任した案件関連の判例の収集」「法的な書類の作成」「出来上がった書類のリーガルチェック」などがあります。
現在のAIの進化により、日本の判例をすべてデータベース化してしまえれば、依頼主の条件を入力するだけでマッチングした判例が出るため、それに付随する必要書類は自動で印刷して出すことができます。
特に、法的な契約書の作成や特許を得意としている弁護士事務所では、ほぼ文言が定例化した文書の作成となるため、すでに導入しているところもあります。
こうしてみると、パラリーガルが担っている仕事はコンピュータ化が進むにつれ不要になり、最後のリーガルチェックですら作成した時点で、コンピュータが自動的にチェックするため、最終的には契約の当事者の記名押印の抜けがないだけのチェックだけで済むため、立ち会った弁護士が確認するだけで完結してしまうことになります。
これだけを見ると、「パラリーガルはなくなっても、弁護士と言う仕事はなくならないのでは?」と思われるかもしれませんが、実際には縮小傾向になると思われます。
「パソコンで出来る」と言うことは、素人でも法的に有効な書類が作れてしまうと言うことで、一般向けにデータベースが解放されてしまえば、「弁護士に頼むまでもなく、安価な費用で書類が作成できる」と言うことになります。
係争の絡まない案件であれば、弁護士が介入するまでもなく、個人で自己解決してしまう可能性が多くなるため、より弁護士事務所も特色を出していく必要が出てくると言えます。
※パラリーガルとは?
弁護士の補助業務を行う専門職のことです。
法律事務所や企業の法務部門で働き、書類の作成や調査、クライアント対応、裁判手続きのサポートなど、弁護士の業務を補助する役割を担います。
弁護士資格は持たないものの、法律に関する知識やスキルを持ち、法律業務をサポートする仕事です。
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郵便料金の改正の弁護士事務所への影響
2017年6月1日から郵便料金が改正されました。
郵便料金の改正の目玉は、ハガキの52円が62円へと10円の値上げのほか、定型外郵便の規格外の設定と新料金の設定です。
この郵便料金の改正が弁護士事務所に影響があるかというと、大きなものではないと言えます。
定形外の料金も長辺34㎝・短辺25cm・厚み3㎝・重さが1kg以内であれば、5月31日以前の定形外の金額と変更がないため、A4以下のサイズの書類を送ることが多い弁護士事務所には、ほぼ変わりがないと言えます。
ハガキが1枚当たり10円の値上げですが、守秘性の高い書類を送ることの多い弁護士事務所で、ハガキを送るシチュエーションは年賀状か暑中見舞いと言った程度で、年間の郵便料金の中で占める割合は小さいと言えます。
今回の郵便料金の改正の背景には、人件費などの輸送コストの増大のほかに、近年増加したネットショッピングやオークションの郵送へのけん制とも取れます。
以前の定型外郵便の規定では、「1辺の長さが60㎝以下で、幅・長さ・高さの合計が60㎝以下・4㎏以下」であれば、全国どこへでも重量別の定額で送ることができました。
そのため、比較的小型の商品であれば宅配便で送付するよりも、かなり安価で送付することができ、おおよそ1kg以下の商品ならば保障がないことを了承できれば、ネットショッピングでも安価な商品は定形外の発送を行っていました。
しかし、今回の改正で500g以上で厚みが3㎝以上ある規格外の物品を送る際には、定形外よりも宅配便で送った方が安くなる運送会社が出るなどの逆転現象があります。
メールでのやり取りが増えるなか、紙媒体の書類でのやり取りが絶対的に無くならない弁護士事務所においては、将来的に定型外郵便の値上げがあった際には、大きなコストアップになるかもしれません。
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弁護士事務所のランニングコストはいかほど?
これから弁護士事務所を立ち上げようとする弁護士にとって、独立資金がどれほどかかるのかというのは、気になるところだと思います。
家賃の高い好立地のビルに弁護士事務所を借りて、高額な家具をとり揃えたりすれば、いくらでもお金はかかることになります。
しかし、それよりも重要なのが毎月のランニングコストになります。
弁護士事務所の初期費用が1000万円かかっても、ランニングコストが月50万円で済めば、初期費用500万円・ランニングコストが月100万円の弁護士事務所と比べて10カ月でペイできて、それ以降は安くなることになります。
弁護士事務所のランニングコストは、弁護士1人・事務所1人で最低60万円かかると言われています。
弁護士事務所の賃料が20万円、事務員の人件費が20万円、事務用品費や交通費・通信費などのもろもろで20万円で、合計60万円となります。
地方なので賃料がもっと安くなる、妻が事務員をしているので事務員の費用が掛からないと言った弁護士事務所もあるかもしれませんが、実際には月60万円で収まらず、月100万円前後かかっているところが多いようです。
弁護士事務所での勤務経験が浅かったり、それこそ弁護士になって即独立と言った変わり種の弁護士などは、弁護士報酬の額はそれなりに理解していても、弁護士事務所を維持するための費用がどれほど掛かるか想像できず、経営者となって初めてどればけの経費がかかるものか気付くと言ったパターンが多いです。
「開業資金にほとんど使ってしまい手持ちには300万円ほどしかないが、1年以内に黒字になれば何とかなる」という考えは非常に危険です。
なぜなら、ランニングコストの月60万円は弁護士事務所の維持費だけで、弁護士自身の給与が含まれていないからです。
弁護士自身の生活費が20万円かかるとすると毎月80万円かかるだけですから、もし弁護士事務所の経営がうまくいかなければ、4ヶ月も経たず弁護士事務所の資金は底をつくことになります。
弁護士事務所の開業を考えているのであれば、開業資金よりもランニングコストを重視して考えた方が良いですね。